外部環境の調べ方~中小企業のIT化課題を見つけるために~

中小企業をIT化する上で欠かせない「外部環境分析」。その調査方法を本コラムで記載します。

外部環境分析

どの企業もIT化するためにIT戦略を策定しているはずです。経営幹部で話し合いながら策定している場合もありますし、経営者が一人で策定している場合もあります。また、ドキュメントに落とさず頭の中で策定している経営者もいらっしゃるかもしれません。
外部環境分析は、IT戦略を策定する上で企業の問題・課題を洗い出すために必要な作業の一つです。

IT戦略の大まかな策定手順

  1. IT化の目標を描く
  2. 経営環境(外部環境、内部環境)を分析する
  3. 問題・課題の分析をする
  4. IT戦略の策定(解決策の立案)

外部環境とは、経営環境の中でも企業ではコントロールできないが、企業活動に様々な影響を与える要素のことです。
例えば、社会、経済、技術の動向、競合動向、そしてIT動向などです。

外部環境分析で機会・脅威、内部環境分析で強み・弱みを導き出し、そして、強力な分析メソッドであるSWOT分析により事業課題を見つけ出します。

外部環境分析のフレームワーク

外部環境分析のフレームワークでよく使われているのが、「PEST分析」と「5Force分析」です。また、筆者は、PEST分析の代わりに、PEST分析に環境項目を加えた「STEEP分析」を用います。
「PEST分析」や「STEEP分析」はマクロ環境を分析することに使い、「5Force」はミクロ環境を分析することに使います。マクロ環境とミクロ環境を両方分析することで企業を取り巻く外部環境を知ることができます。

PEST分析の分析要素
  • P:Politics(政治)
  • E:Economy(経済)
  • S:Society(社会)
  • T:Technology(技術)
STEEP分析の分析要素
  • S:Society(社会)
  • T:Technology(技術)
  • E:Economy(経済)
  • E:Environment(環境)
  • P:Politics(政治)
5Force分析の分析要素
  • 売り手の交渉力
  • 買い手の交渉力
  • 競合との関係
  • 新規参入者の脅威
  • 代替え品の脅威

外部環境の調べ方

外部環境の変化を知るには、日頃から様々な情報を集めるため常にアンテナを張っておく必要があります。しかしながら、必要に迫られ外部環境を急遽調査することもあるかもしれません。そんな場合に何をどのように調べれば良いか悩むと思います。そこで、外部環境の調べ方について、筆者が行っている方法を紹介します。

マクロ環境の調べ方

STEEP分析の分析項目に沿ってその調べ方を紹介します。

S:Society(社会)

人口動態
出生,死亡,流入,流出で絶えず変わり,また結婚,離婚でも内部構造が変わり、このような人口集団の変動を人口動態と呼びます。
政府から発表されている資料や政府統計の総合窓口にて調べることができます。
全国的には結局、少子高齢化の再認識になってしまいがちです。

ライフスタイル
生活の様式・営み方・人生観・価値観・習慣などを含めた個人の生き方をライフスタイルと呼びます。
常に世の中の情勢を確認することが必要ですが、政府から発表されている資料や統計局ホームページでも調べることができます。
例えば、エコに対しての関心度の高さを確認して、企業の商品・サービスにどのように活かせるかの分析に使います。

所得
政府から発表されている資料や統計局ホームページ(全国家計構造調査)で調べることができます。
例えば、所得層の消費動向と組み合わせることで、企業の商品・サービスにどのように活かせるかの分析に使います。

流行/世論
常に世の中の情勢を確認することが必要です。信用度には欠けますが、SNSでの発信量などからもトレンドを知ることができます。

T:Technology(技術)

IT/デジタル
トレンドを確認するなら、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会の企業IT動向調査が役に立ちます。発行から一定期間経った調査結果を無料で公開してくれています。また、中小企業のIT動向であれば、近年の中小企業庁の中小企業白書にて取り上げられています。
技術動向であれば、ネットメディアの、ビジネス+IT@ITなどで確認できます。

代替技術
自動車(ガソリン車から電気車や水素車)などの有名どころは一般メディアにて取り上げられるのですが、関心の低い技術は、一般メディアで確認できないと思います。業界専門誌などで日頃から確認することが必要です。情報の信用度に欠けますがインターネットより検索して調べることも可能です。

特許・実用新案権
特許情報プラットフォームにて、特許・実用新案権を調べることができます。

E:Economy(経済)

景気動向
内閣府が発表している「景気動向指数」で調べることができます。また、自治体が取りまとめている資料でも調べることができます。例えば大阪府の経済動向であれば大阪府/大阪産業経済リサーチ&デザインセンター orcieに資料が掲載されています。

為替/金利
為替や政策金利はインターネットで検索すると直ぐに調べることができます。例えば、為替だと為替レート (ch225.com)でリアルタイムで確認できます。

失業率
政府から発表されている資料や統計局ホームページ(労働力調査)で調べることができます。

設備投資
政府から発表されている資料や財務省「法人企業統計」で調べることができます。
設備投資は、代表的な景気の先行指標ですので、上向いていれば今後景気が良くなっていくと予測できます。

E:Environment(環境)

気候変動
世間的に関心が高いので新聞やネットメディアなどが良く取り上げられています。現在の日本であれば、温暖化や集中豪雨の増加などが挙げられます。
脱炭素、カーボンニュートラルなどに貢献できる企業であれば経営戦略に組み込むことになると思われます。

エネルギー/資源
政府から発表されている資料や資源エネルギー庁のエネルギー消費統計調査で調べることができます。
省エネ、再生可能エネルギーへの変更などを経営戦略に組み込むことになると思われます。

汚染規制
水質・空気などの汚染に対しての規制を地元自治体で確認することになります。

P:Politics(政治)

規制/税制
業種業態ごとの規制や税制を確認することになります。

政権
常に世の中の情勢を確認することが必要です。また、内閣府ホームページで確認できます。
政府の動向を確認することで、将来の政策(新たな補助金など)に備えることができます。

補助金
中小企業庁の制度ナビで確認することができます。

外交/関税
世間的に関心が高いものは新聞やネットメディアで確認できます。また、外交政策については外務省ホームページ(外交政策)、関税については財務省ホームページ(関税制度)で確認できます。

ミクロ環境の調べ方

常にパートナー会社から情報を集めたり、競合他社を調査するが必要になります。

業界動向を調べるには、株式会社きんざい出版の「業種別審査辞典」を用います。図書館よっては蔵書されているので、ほぼ無料で情報を取得することが可能です。
競合他社の情報は、有料ですが帝国データバンクのサービスで調べることが可能です。

中小企業のIT化動向について

中小企業をIT化するうえで分析するべき外部環境のひとつである、中小企業のIT化(デジタル化)動向(2021年時点)について、中小企業白書2021年版より取り上げます。

  • 感染症流行により、中小企業のデジタル化に対する意識が高まっています
  • 働き方改革や効率化の取組に加え、テレワークの推進など事業継続力強化の観点でデジタル化に取り組む企業が多く存在します
  • デジタル化推進に向けては、アナログな文化・価値観の定着といった組織的な課題や明確な目的・目標が定まっていないといった事業方針上の課題があります
  • 中小企業のデジタル化推進に向けては、デジタル化に積極的に取り組む組織文化の醸成や業務プロセスの見直しなど、企業自身の組織改革が必要です
  • 経営者が積極的に関与することによって、企業全体のデジタル化に向けた方針を示し、全社的に推進することでより大きな成果を生みだすことができる可能性があります

外部環境情報を漏れなく正確に収集することで、実現性の高い経営戦略、IT戦略を策定することが可能になります。

弊社は中小企業のIT化を豊富な知識とノウハウでサポートしております。企業のDX,IT化を進めたいと真剣に思われた際には、ぜひご相談してください。
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