中小企業でIT導入(or購入)する前に行う事~要件定義(RD)~
中小企業でIT導入(or購入)する前に行う事~要件定義(RD)~
目次
中小企業がデジタル化を行うには
企業がデジタル化を行うには、何かしらのITの導入を行う必要があります。
現状、ITの導入には大きく3つの手段が考えられます。
- クラウドアプリを利用する
- パッケージソフトを購入する
- 独自のシステムを開発する
大手企業に比べて、資金力が乏しい中小企業であれば、①クラウドアプリを利用することが多くなると思います。
ただし、安価なパッケージソフトもありますし、低価格でシステムを開発してくれる業者もあり、一概にどの手段が中小企業にマッチしているかは決めることができません。
どの手段を使うにしても、企業が始めに行わなくてはならないことがあります。
それは、どんなITが必要になるのかをまとめる作業、いわゆる「要件定義」を行う事です。
IT導入における要件定義とは
ITを利用して実現したい事があるからITの導入をしたいと考えるはずです。
例えば、売上を増やしたい、コストを削減したい、作業を効率化したい等など。
しかしながら「売上を増やすITを導入する」と決めたとしてもそれだけでは、IT導入はできません。具体的にどんな機能を持つITを導入するかまで決めないとならないからです。それを行うのが「要件定義」と呼ばれる作業です。
IT導入における要件定義とは、具体的にどんなITを導入するかを決め、ドキュメントにまとめる作業になります。
ちなみに、要件定義は「RD(Requirements Definitionの略)」(読み方はアールディー)と呼ばれます。
要件定義は誰が行うのか?
要件定義は、ITを導入しようとしている企業が、成果物に対しての責任を負います。
しかしながら、ITを導入したことが無い企業にとって、要件定義で何を決めなければならないか分からないと思います。そのため、外部人員であるITベンダー(※)や、IT導入の専門家(いわゆるITコンサルタントと呼ばれている専門家)に依頼するケースがほとんどだと思います。
※ITベンダーとは、クラウドアプリ、パッケージソフトを販売する企業や、システムを開発して提供する企業のことです。
自社だけITを導入するための人員をまかなえる企業は別ですが、中小企業であればほとんどの場合、要件定義は、ITベンダーやIT専門家が大部分のドキュメントを作成し、その成果物の責任をITを導入しようとしている企業が負うことで行われます。
要件定義で決める事は?
要件定義では、次の2つの要件を決めます。
- 業務要件(ビジネス要件)
- システム化要件
作業順序は、業務要件を決めてから、システム化要件を決めます。
要件定義の結果によってIT導入の方向性が大きく変わってきます。そのため、要件定義で決まる内容によって、IT導入が成功するかどうかが決まってしまうといっても過言ではありません。
業務要件(ビジネス要件)
業務要件は、実現したい目的を満たすためには、ITで業務をどのように変えないといけないのかを定義します。
そのためには、ITを導入しようとしている企業が積極的に参加する必要があります。
具体的に次の手順で検討し、その検討内容をドキュメントに記載します。
- 現状の業務内容
- 問題・ニーズの確認
- 課題・施策の検討
- 将来の業務内容(あるべき姿)
現状をAs-Is(読み方はアズイズ)、将来をTo-Be(読み方はトゥビィ)とも呼ばれます。
ここでのポイントは、4番目のあるべき姿だけが業務要件のように思えますが、あるべき姿だけをドキュメントに記載するのでは無く、そこにたどり着くための検討過程も記載するというところです。
そこには次の理由があると考えます。
※私が長年システム開発に携わってきた経験からこれらの理由を実感しています。
- 現状の業務をあるべき姿に変えるには、検討過程を基にした具体的な業務の変更手順を作成する必要があるため
- 代替え案を検討する際になぜその要件にたどり着いたかを遡る必要があるため
この後の作業では、業務要件を基にシステム化要件を検討することになりますが、機能面やコスト面でIT化が不可能な要件も出てきます。その場合に、代替え案を検討することがあります。 - 何のために導入したのか理由が分からないものは、必要かどうかの判断ができないため
導入したITはいつかは不要になるときが来ます。しかしながら、導入したITを不要ではと感じたとしても、明確に結論づけられるまで廃棄できないものです。
システム化要件
システム化要件は、業務要件を満たすためには、導入するITはどのようなものであるべきかを定義します。
主にITベンダーが提案しますが、ITを導入する企業が最終的な判断を行う必要があります。
主に次の事を検討します。
- 機能要件
- 非機能要件
- 移行方針
機能要件
機能要件とは、導入するITに必要な画面・帳票・動作といった機能への要件です。
例えば次のことです。
- Fit&Gap分析:クラウドアプリやパッケージソフトを導入するなら、それらが備えている機能が業務要件をどれだけ満たしているか、満たしていないかの確認
- システム化する業務の一覧
- 必要な画面や帳票、またそれらのレイアウト
- バッチ処理の内容
クラウドアプリやパッケージソフトを導入する予定なら、直にそのものを操作して検討する事ができます。
システム開発を行う予定なら、ITベンダーが設計書を作成しそれを基に検討することになります。
非機能要件
非機能要件とは、ITを動作させる環境(クラウド、PC、サーバ)に必要な性能や、監視する時間帯等のサービスレベルについての要件です。
例えば次のことです。
- 可用性:継続的に利用可能とするための要件、例えば、冗長化やバックアップ機能等
- 性能:通信速度や処理速度への要件、例えば、画面のボタンを押してから処理が完了するまでの時間等
- 運用・保守(サービスレベル):運用や保守への要求、例えば、監視する時間帯、トラブルが生じた際の対応法等
- セキュリティ:セキュリティへの要件、例えば、不正アクセスの監視や検知等
ITを導入する企業にとって、非機能要件を想像することが難しいと思います。しかしながら、非機能要件を適当に決めてしまうと、コストが高額になったり、トラブルが生じても対応できなかったりと不具合が生じてしまいます。ITベンダーとしっかり検討する必要があります。
移行方針
移行方針とは、移行する対象、入れ替える際の方法やタイミングについての方針です。
今まで行っていた業務や、使っていたITを、準備無くある日突然、完全に切り替えることは不可能だと思います。
移行までに新しい業務やITの操作を覚えたり、先だってデータを移行したりと色々と行う事があります。また、切替後はトラブルも多く業務が止まらないような体制にする必要があります。
移行するものとしては、次のものがあります。
- 業務処理システムの移行
- (ハードやネットワーク、基礎ソフトウェア等)インフラの移行
- データの移行
また、移行には大きく分けると3つのやり方があります。
- 一気に切替を行うビッグバン方式
- 段階的に切り替えていくさみだれ方式
- 一定期間、新旧のITを同時に運用する並行運用
それぞれに、メリット・デメリットがあります。例えば、一気に切り替えるとトラブルが生じた際に業務が止まってしまう可能性があります。
どの移行の方式が良いかは、規模、業務への影響、コスト等を考慮して決める必要があります。
弊社のデジタル化支援について
弊社は、中小企業向けのデジタル化支援を行っています。IT導入における要件定義の作成をお手伝いします。
また、デジタル化で経営課題をどのように解決していくかの計画立案、アプリ・ソフトウェアの導入支援、システムの運用改善の支援、等の企業のデジタル化、IT化を推進する幅広い支援を行っています。
お気軽にお問い合わせください。
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