中小企業のIT化には正確な問題・課題分析が重要です

企業がIT化する時、必ず問題・課題分析を行っています。コンサルタントに依頼してがっちり行うこともありますし、経営者が一人で頭の中で実施していることもあると思います。そして、出てきた問題・課題に対しての解決策としてITを使うという選択肢を選んでいます。

中小企業のIT化には正確な問題・課題分析が重要

IT化に向けた問題・課題分析の結果が間違えているとどうなるでしょうか。分析結果から導き出される解決策も効果が得られないものとなり、IT化に掛けた時間や投資が無駄に終わってしまいます。

例えば、売上が増加せずに困っている企業には、営業に問題がある、商品に問題があるといったような問題が考えられると思います。ここで、本当は商品に魅力が無いことが原因なのに、営業の問題として、ホームページを作り替えたり、SNSを使った営業に力を入れたり、顧客管理システムを導入したりしても、効果は低いものとなります。

中小企業は一般的に資金や人材に余裕がないので、効果の低い解決策をとることは避けなければなりません。また、一旦、システム導入などを開始してしまうと途中で停止することが難しくなります。無駄な時間や投資を抑えるためにも、問題・課題分析に力を入れて、正しい分析結果を出すことが重要になります。

よくある経営課題の例

経営課題にはどんなものがあるのか気になる方もいらっしゃるかもしれませんので、中小企業によくある経営課題の例を挙げます。一般的にどのようなことが課題とされているかを確認して、貴社の経営状況と照らして課題を探ってみてください。

カテゴリ課題例
人材人材の確保・育成
後継者の育成・決定
営業・販路開拓営業力・販売力の維持強化
国内の新規顧客・販路の開拓
海外の新規顧客・販路の開拓
生産・製造設備増強
設備更新
設備廃棄
財務運転資金の確保
設備投資資金の確保
コストの削減
借入金の削減
商品・サービスの開発・改善新商品・新サービスの開発
商品・サービスの高付加価値化(ブランド化)
技術・研究開発新技術開発
技術力の強化
ICT活用業務プロセスの効率化
間接業務の削減
データを活用した戦略立案
その他知的財産権の活用
企業間や産学連携

出典:中小企業庁ウェブサイト 2020年度小規模事業白書 より抜粋

問題・課題の具体性について

前項に挙げた課題例には具体性が無いので、これだけでは解決策は作ることはできません。もっと業務に近い段階まで具体化して問題・課題を考える必要があります。

例えば、国内の新規顧客・販路の開拓が経営課題とする場合、新規顧客を開拓するためのマーケティングノウハウが無い、市場の情報を集める術が無い・分析できる人材がいない、新規顧客を管理する術が無いといったことが具体的な内容になってくると思います。

問題・課題を抽出する際、このような内容の具体性(事業レベル 、粒度)をどこまでのものにするのが良いか悩むと思います。部門長が考えると抽象的な内容に偏り、作業担当が考えると具体的な内容に偏り易くなります。戦略の方針決めには抽象的な内容が向いており、施策決めには具体的な内容が向いています。どちらの見方も必要であり、課題・問題を抽出する際には具体性を意識せずに出せるだけ出し、分析時にきちんとまとめることが重要になります。

問題・課題の分析手順

正確な分析結果を導き出すには、問題・課題はできるだけ多く抽出し、そして、抽出された問題・課題を効率良く、分かり易くまとめなければなりません。そこで、筆者が使っている方法を紹介します。

問題・課題抽出には、「ブレーンストーミング法」

ブレーンストーミング法は、問題・課題の抽出に限らず、何かしらの意見を出し合う場合にもっとも使われている方法です。5名から7名ぐらいが集まり、集団でアイデアを出し合います。アイデアを出し合うことで、さらなるアイデアを誘発できるという手法です。

ブレーンストーミング法は、アイデアが多く出やすいということ1番のメリットですが、他に下記のメリットもあります。

  • 参加者は特別な技能やノウハウを必要とせず、誰でも簡単に作業ができる
    ※進行役は、それなりの技能・ノウハウを身につけている必要があります
  • 参加者は当事者意識が芽生えるので、以降の問題・課題解決プロジェクトにも協力的になる
  • 集団で検討したアイデアなので、意思決定者の納得が得やすい

※ブレーンストーミング法の詳細内容、手順を詳しく知りたい場合は、関連書籍、ネット検索(丁寧な説明サイトがあります)にて別途ご確認ください。

課題分類には、KJ法

KJ法は、収集した情報を効率よく整理するための方法であり、ブレーンストーミング法で抽出されたアイデアをまとめる際によく使われます。収集した情報を付箋などに書き出してカード化し、同じ系統のものでグループ化して、グループ間の論理的な関連性、また、グループ内部での関連性を見いだしていく手法です。

KJ法は、アイデアをカード化することで、様々な観点でまとめ直すことが容易にできます。また、カード化することで視覚化でき、誰にでも分かり易くまとめることができます。
まとめ方としては次のものがあります。

  • アイデアを因果関係のあるもので結びつけてロジックツリーのようにまとめる
  • 原因と影響の関係でマトリクス表にまとめる
    原因例:組織/ルール/仕組み、簡素化/標準化、コミュニケーション、技術力、情報システム、人材育成/人材活用、設備/施設、意識/文化
    影響例:生産性、品質、コスト、納期時間

※KJ法の詳細内容、手順を詳しく知りたい場合は、関連書籍、ネット検索(丁寧な説明サイトがあります)にて別途ご確認ください。

解決策の検討

ブレーンストーミング法、KJ法を使えば、問題・課題を多く抽出しきちんと分類できるはずです。ただし、自由なアイデア出しが元になっているので、客観性が低い可能性があります。関連する実績情報(例えば、お客様や従業員のアンケート調査結果、財務分析結果など)を取得し、分析の客観性を高めます。

そして、問題・課題の分析が終われば、その結果に基づいて解決策を検討します。

解決策は、企業の置かれている外部環境や、ビジネス遂行能力、IT環境などの内部環境により企業固有のものになります。解決策を考える際にもブレーンストーミング法、KJ法が有効であり、多くのアイデアを出し合い、効果を分析することでよりよいものを選ぶことができます。

また、問題・課題には必ずと言っていいほど、「作業/管理に時間が掛かる」「作業ミスが多い」「情報共有ができてない」「有効な情報を集めることができていない」「ノウハウを引き継ぐ仕組みがない」が挙がってきます。これらにはIT導入による解決策を一番に考えてみてください。最も効率良く問題・課題を解消できるはずです。

弊社は中小企業のIT化を豊富な知識とノウハウでサポートしております。企業のDX,IT化を進めたいと真剣に思われた際には、ぜひご相談してください。
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