知っておかないと損するDX関連の補助金・税優遇制度(2020年度)

※2021年2月時点の情報です。

DX推進のための金銭的支援策

DXを推進する際に、ITの導入コストが課題にならないでしょうか?

DXを推進するには、新たなITの導入が必要になる場合があります。しかし、多くの中小企業は新たなITを導入する資金の余裕が無く、金銭面からDXを躊躇してしまっている現状があります。

そこで、DX推進のために中小企業が利用できる金銭的支援策を紹介します。

  • ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)
  • 小規模事業者持続化補助金(通称:持続化補助金)
  • IT導入補助金
  • DX投資促進税制

これらは、IT導入を対象とした補助金及び税制優遇策です。





各々対象としているIT導入の種類が異なりますので、しっかりと内容をご確認の上ご利用してください。

公式紹介ページ又は資料へのリンク(2021年2月時点)

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下:ものづくり補助金)は、中小企業等が行う革新的なサービス開発・試作品開発や生産プロセスの改善に必要な設備投資等を支援する補助金です。

令和元年度補正・令和二年度補正の5次締切分(締め切り2月22日)においては、一般型グローバル展開型があります。

他に、ビジネスモデル構築型もありますが、こちらは、中小企業による経営革新のための設備投資等を支援する一般型、グローバル展開型とは異なり、中小企業の革新的な事業計画策定を支援する民間サービスが対象です。

中小企業が自社の事業に対するものづくり補助金は、ビジネスモデル構築型ではなく、一般型、グローバル展開型になります。

ものづくり補助金の概要
項目一般型グローバル展開型
概要中小企業者等が行う「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援中小企業者等が海外事業の拡大・強化等を目的とした
「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援
(①海外直接投資、②海外市場開拓、③インバウンド市場開拓、④海外事業者との共同事業のいずれかに合致するもの)
補助金額100万円~1,000万円1,000万円~3,000万円
補助率[通常枠] 中小企業者 1/2、小規模事業者 2/3

[※低感染リスク型ビジネス枠特別枠] 2/3
中小企業者 1/2、小規模企業者・小規模事業者 2/3
補助要件以下を満たす3~5年の事業計画の策定及び実行
・付加価値額 +3%以上/年
・給与支給総額+1.5%以上/年
・事業場内最低賃金≧地域別最低賃金+30円
同左
設備投資単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要同左
補助対象経費[通常枠] 機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費

[※低感染リスク型ビジネス枠] 上記に加えて、広告宣伝費・販売促進費
機械装置・システム構築費、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費、海外旅費

※低感染リスク型ビジネス枠については、補助対象経費全額が、次のいずれかの要件に合致する投資です

  • 物理的な対人接触を減じることに資する革新的な製品・サービスの開発
  • 物理的な対人接触を減じる製品・システムを導入した生産プロセス・サービス提供方法の改善
  • ウィズコロナ、ポストコロナに対応したビジネスモデルへの抜本的な転換に係る設備・システム投資
申請方法

事業計画書および添付資料を電子申請システムより提出し申請します。

電子申請システムでのみ申請を受け付けています。ログインにはGビスプライムアカウントの取得が必要ですので、未取得の方は利用登録をする必要があります。

また、公募は年間で数回あり、1度不採択になった案件でも次の公募で申請することができます。※修正は必要になると思います。

提出する資料と情報は次のとおりです。

  • 基礎的な企業情報等 ※電子申請システムにて登録
  • 事業計画書(具体的取組内容、将来の展望、数値目標等)
  • 賃金引上げ計画の表明書(直近の最低賃金と給与支給総額を明記し、それを引き上げる計画に従業員が合意していることがわかる書面)
  • 決算書等(直近2年間の貸借対照表・損益計算書等)
  • その他加点に必要な資料(任意)
    • 成長性加点:経営革新計画承認書
    • 政策加点 :開業届 又は 履歴事項全部証明書(創業又は第2創業の場合)
    • 災害等加点:(連携)事業継続力強化計画認定書
    • 賃上げ加点:特定適用事業所該当通知書(被用者保険の適用拡大を行う場合)
採択に向けてのポイント

申請すれば必ず採択されるものではなく、審査委員会が判定しより優れた事業提案が採択されますまた、不備がある場合(例えば、小規模事業者でないにも関わらず、通常枠で補助率3分の2の事業計画を提出等)は、不採択となってしまいます。

採択されるためにはどのようなことをすればよいのでしょうか。当然のことですが、事業計画書の内容で判定されます。事業計画書に自社の経営課題を分析して具体的取組内容、将来の展望、数値目標を記載することが重要です。事業計画書に何を記載すればよいかは、google等で検索すれば紹介しているサイトが多数見つかるのでそちらもご参考ください。

ここでは、筆者が体験で得た、採択に向けてのちょっと細かいポイントを説明します。

1.補助対象か迷ったら、ものづくり補助金事務局サポートセンターに問い合わせましょう

申請するには対象となる設備・システム投資を行うことが条件になります。予定している設備・システム投資が対象になるかどうか判断が難しい場合があります。その場合は必ずものづくり補助金事務局サポートセンターに問い合わせましょう。支援者等の意見だけで進めてトラブルになった事例もあります。

2.加点項目はできるだけ満たしましょう

加点項目(①成長性加点、②政策加点、③災害等加点、④賃上げ加点等)は採択基準に大きく影響します。そのためできるだけ満たすべきです。しかしながら加点項目には満たすまでに時間が掛かるものがあります。そのため準備期間を確保し計画を立てて進める必要があります。

令和元年度補正・令和二年度補正での採択率は、加点0個で14.5%、加点1個で21.4%、加点2個で39.7%、加点3個で59.3%、加点4個で75.7%、加点5個で84.6%です。加点3点以上はほしいところです。

3.専門的過ぎる技術はわかりやすい説明を入れましょう

審査委員には技術に精通された方も担当されていますが、専門的過ぎる技術ですと有用性が認識できない可能性があります。技術の認知度の有る無しは判断が難しいですが、google等で検索して出てこないまたは検索数が少ない技術や言葉は、事業計画書にわかりやすく説明を入れたほうが良いでしょう。

4.技術の素晴らしさだけでなく、経営改革の効果と具体的根拠を示しましょう

技術力を売りにされている企業にある傾向ですが、いかに革新的な技術(もしくは製品やサービス)なのかだけをアピールする事業計画書になっている可能性があります。新しく生み出した製品やサービス、ビジネスプロセス等がもたらす効果と、それを納得できるようする具体的根拠を示すことが大事です。

ものづくり補助金は、ソフトウェア購入などIT設備投資に使えるので、DX推進するには最適な補助金の一つだと思います。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金(以下:持続化補助金)は、小規模事業者等の販路開拓等の取組や、販路開拓等と併せて行う業務効率化の取組を行うための経費を支援する補助金です。

令和元年度補正の5次締切分(締め切り6月4日)では一般型が公募中です。

他にコロナ特別対応型がありましたが、令和2年12月10日をもって公募終了となりました。

持続化補助金の概要
項目一般型
概要小規模事業者等の販路開拓等の取組や、販路開拓等と併せて行う業務効率化の取組を支援するための経費を支援
補助金額上限50万円
特定条件を満たせば上限100万円
補助率2/3
補助対象経費①機械装置等費、②広報費、③展示会等出展費、④旅費、⑤開発費、⑥資料購入費
⑦雑役務費、⑧借料、⑨専門家謝金、⑩専門家旅費、⑪設備処分費、⑫委託費、⑬外注費
申請方法

申請には、事業を営んでいる所在地を管轄する商工会議所または商工会がサポートがあります。

また、公募は年間で数回あり、1度不採択になった案件でも次の公募で申請することができます。※修正は必要になると思います。

申請手順は次のとおりです。

  1. 「経営計画書」および「補助事業計画書」を作成する
  2. 経営計画書」および「補助事業計画書」の写し等を地域の商工会議所窓口または商工会地区窓口に提出する
  3. 後日、地域の商工会議所または商工会が「事業支援計画書」を発行する
  4. 必要な提出物を全て揃え、補助金事務局まで郵送または電子申請(単独申請のみ対象)により提出する
採択に向けてのポイント

申請すれば必ず採択されるものではなく、審査委員会が判定しより優れた事業提案が採択されます

採択されるためにはどのようなことをすればよいのでしょうか。持続化補助金は審査の観点が、公募要領に記載されています。

その中から2点ピックアップして、ポイントを説明します。

1.自社の製品・サービスや自社の強みは、具体的根拠を記載しましょう

審査項目に「自社の製品・サービスや自社の強みを適切に把握しているか。」があります。では、強みを適切に把握していることを審査委員に伝えるにはどうしたらよいでしょうか。

解決策の一つとして、製品・サービスの特長だけでなく、顧客に受け入れられていることを表す根拠、例えば製品・サービスの売上高や顧客の声などを記載することで具体性がでて伝わりやすくなります。

2.補助事業計画は体制は会社名または人名、スケジュールは日付を記載しましょう

審査項目に補助事業計画は具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。」があります。では、実現可能性が高いことを審査委員に伝えるにはどうしたらよいでしょうか。

解決策の一つとして、推進体制において関係会社名、関係者名を記載し、スケジュールにおいて日付を記載することで具体性がでて伝わりやすくなります。

持続化補助金では、特定業務用ソフトウェアの購入や、ウェブサイト作成や更新なども対象経費となりIT導入に利用できます。販路開拓でDXを推進するには最適な補助金の一つだと思います。

IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が業務効率化・売上アップといった経営力の向上・強化を図るために、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費を支援する補助金です。

2020年度の交付申請は受付を終了しています。 予算は確保されているので来年度も公募があると思われます。

補助金の種類は、A類型、B類型、C類型がありました。





A型・B型=生産性向上





C型=生産性向上+新型コロナの特徴的な影響を乗り越える為の前向きな投資

IT導入補助金の概要
項目A類型B類型C類型-1C類型-2
補助金額30万円~150万円(未満)150万円~450万円30万円~450万円30万円~450万円
補助率1/21/22/33/4
ソフトウェア条件必ず1つ以上の業務プロセス(※1)を保有するソフトウェア必ず4つ以上の業務プロセス(※1)を保有するソフトウェア甲(※2)のみ乙(※2)または丙(※2)いずれか1つ以上
補助対象経費ソフトウエア費、導入関連費等ソフトウエア費、導入関連費等ソフトウエア費、導入関連費、ハードウェアレンタル費ソフトウエア費、導入関連費、ハードウェアレンタル費
注意点HP・ECサイト構築には使えないHP・ECサイト構築には使えないHP構築には使えない
ECサイト構築は可能性がある
HP構築には使えない
ECサイト構築は可能性がある

※1 業務プロセスとは、ソフトウェアが持つ機能により生産性が向上する工程、あるいは効率化される工程のことを指します。詳細は、IT導入補助金2020 別紙2(一般社団法人サービスデザイン推進協議会)に定義されています。

※2 C類型は、補助対象経費の1/6以上が次の「甲」「乙」「丙」のいずれかの要件に合致する投資である事業です。





甲:サプライチェーンの毀損への対応





乙:非対面型ビジネスモデルへの転換





丙:テレワーク環境の整備

申請方法

準備段階にて、支援機関(よろず支援拠点・商工会・商工会議所・ITコーディネータ等)に経営課題や課題解決のためのITツールを相談することをお勧めします。

申請手順は次のとおりです。選択したIT導入支援事業者と協力して進めることになります。

  1. IT導入支援事業者への補助対象事業に関する問い合わせ、相談等及び、Gビスプライムアカウント取得
  2. ITツールの選定及び、IT導入支援事業者へ導入するITツールの商談、見積もり等依頼
  3. IT導入支援事業者が申請マイページへ招待
  4. 申請マイページ作成
  5. IT導入支援事業者と協力して交付申請の作成
  6. 交付申請の提出

申請が採択された後、IT導入支援事業者とITツールの契約をすることになります。

採択に向けてのポイント

申請すれば必ず採択されるものではなく、審査委員会が判定しより優れた事業提案が採択されます

採択されるためにはどのようなことをすればよいのでしょうか。IT導入補助金は審査の観点が、公募要領に記載されています。

その中から2点ピックアップして、ポイントを説明します。

1.財務診断内容から経営課題を見つけましょう

審査項目に「自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか」とあります。では、具体的な問題意識を持っていることをどうやって伝えたらよいでしょうか。

解決策の一つとして、財務診断内容から経営課題を把握し経営改善の意思があること伝えるのがよいでしょう。経営課題は、経営者がヒアリングなどで調査したり、外部コンサルタントに調べてもらうことでも把握できます。しかし、IT導入補助金の申請ではそれらを伝える手段がありません。そのため、IT導入補助金の申請項目となっている財務診断内容から経営課題を見つけることがよいでしょう。

2.経営状況の報告で該当項目チェックは申請するITツールと矛盾しないよう選択しましょう

経営状況の報告で該当項目をチェックすることになりますが、矛盾のないように項目を選ぶ必要があります。例えば、過去にIT投資を行ったことがあり、導入されたITに対して不満があると選んでいるのに、過去に行ったIT投資と異なる業務のITツールを申請していると矛盾になります。矛盾があると経営課題を把握できていない、妥当な対策を取れていないというように伝わり評価が下がる可能性があります。

IT導入補助金では、幅広い業務のIT導入に利用できます。DXを推進するには最適な補助金の一つだと思います。

DX投資促進税制

DX投資促進税制は、令和3年度税制改正により創設予定です。DXに向けた計画を認定した上で、DXの実現に必要なクラウド技術を活用したデジタル関連投資に対し、税額控除(3%もしくは5%)又は特別償却30%を措置するというものです。

DX投資促進税制の概要
項目DX投資促進税制
適用期限令和4年度末まで
認定要件(デジタル要件)
・データ連携(共有他の法人等が有するデータ又は事業者がセンサー等を利用して新たに取得するデータと内部データとを合わせて連携すること)

・クラウド技術の活用

・情報処理推進機構が審査する「DX認定」の取得(レガシー回避・サイバーセキュリティ等の確保)
認定要件(企業変革要件)・全社の意思決定に基づくものであること(取締役会等の決議文書添付等)

・一定以上の生産性向上などが見込まれること等
対象設備・ソフトウェア
・繰延資産(クラウドシステムへの移行に係る初期費用)
・器具備品(ソフトウェア・繰延資産と連携して使用するものに限る)
・機械装置(ソフトウェア・繰延資産と連携して使用するものに限る)
税制処置税額控除 3% [グループ外の他法人ともデータ連携・共有する場合5%]
または、
特別償却 30%
その他投資額下限:売上高比0.1%以上
投資額上限:300億円(300億円を上回る投資は300億円まで)
税額控除上限:「カーボンニュートラル投資促進税制」と合わせて当期法人税額の20%まで

EDIを使い企業間取引をデータ化しペーバーレス化/作業効率化を図るなど、企業間のデータ連携を改革する投資に使える税制優遇策です。

最後に

金銭支援策を4つ挙げました。それぞれ対象となる用途/目的が異なります。公式ページでご確認上ご利用ください。

支援策用途/目的
ものづくり補助金「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備投資
持続化補助金販路開拓のための経費
IT導入補助金経営力の向上・強化を図るためのITツール
DX投資促進税制データ連携・共有を実現するための設備

これら金銭支援策は、あたなの会社のDX推進に大いに役立つはずです。ぜひ活用を検討してみてください。