中小企業に必要なナレッジの共有を効率化~ナレッジマネジメントシステム~

ナレッジの共有

中小企業に必要なナレッジの共有~ナレッジマネジメントシステム~

中小企業のナレッジの分散化問題

ナレッジとは、ビジネスの場面では「企業にとって有益となる知識や情報」という意味で使われており、ナレッジが多ければ多いほど企業にとっての強みになります。

中小企業では、少ない人数で多くの業務を回しているケースが多くあります。その場合、どうしても特定の人しか行わない業務が増え、業務のナレッジが特定の人に偏ってしまいます。その人が不在になると、今まで効率的に行われていた業務が途端に回らなくなります。一時的な不在であれば影響も少ないのですが、退社されてしまうと他の人が育つまで長期的に生産性が下がってしまいます。

ほとんどの中小企業の経営者はナレッジの共有の大切さに気付いていると思います。(私が行っている経営診断でもナレッジの共有を経営課題の上位として挙げられている方が多いです。) 

ナレッジを共有するための理想的な状態は、社員が自主的に自身の持っているナレッジを、他の社員に共有してくれることですが、そうはならないのが現実だと思います。そのため、経営者が自ら様々な取組を行っています。そこにナレッジマネジメントシステムを使った取組も考慮してはどうでしょうか。

ナレッジを共有するメリット

ナレッジを共有することにより得られるメリットには、次のようなものが挙げられます。

  • 業務効率の向上
    ナレッジを共有することにより、業務にかかる時間や手間を削減できます。社員が何度も同じことを調べる必要がなくなったり、手順書に従って作業を行えるようになったりするため、業務の効率が向上します。
  • ナレッジの継承
    ナレッジを文章や計算式、図表等で誰にでも分かる形で表して共有することで、定年等により退社する社員のナレッジを継承することができます。
  • 組織の共通認識の確立
    共有されたナレッジに基づいて、社員の間で共通の認識ができあがるため、業務のミスや誤解を防ぐことができます。
  • 人材育成の促進
    社員が持つ知識やスキルを共有することで、人材育成の促進に繋がります。

ナレッジを共有するメリットは多くあるので、既に取り組まれている中小企業は多いと思います。

中小企業で良く行われているナレッジの共有への取組例

ナレッジを共有するためには、まず社員からナレッジを収集する必要があります。そして、そのナレッジを蓄積し、社員が自由に閲覧できるようにします。

中小企業で良く行われている取組として次のようなものがあります。

ナレッジの収集

  • 作業日報の作成
    社員に1日の作業内容を記録させ、その記録の中で、問題点や改善点の気付きも記載してもらう。
  • カイゼン等の活動記録の作成
    通常業務とは別にカイゼン活動等を実施し、その活動内容を記録して収集します。
  • 作業マニュアルの作成
    社員に作業マニュアルを作るように指示し、作業マニュアルを収集します。

ナレッジの共有

  • グループミーティング
    定期的にグループミーティングを開催し、社員間でナレッジの共有を図ります。
  • 掲示板への貼り出し
    ナレッジの共有に掲示板を使います。社員で共有してほしいナレッジを、食堂や会議室の掲示板に貼り出し目に付くようにします。

ここに挙げた以外にも様々な取組を行っています。これらはナレッジを共有するのにとても有効な手段です。しかしながら、これらを紙ベースで行っているところが多いという事実があります。紙にナレッジを記載し、紙で保管し、紙を配っている、これは対応や管理がとても大変だと思います。

一歩デジタル化して、WordやExcel等の電子ファイルで作成して、パソコンや※オンラインストレージのフォルダの中に格納しているところもあると思います。フォルダの管理をきちんとしないと、どこにファイルがあるか分からなくなる場合も多々あります。また、ファイルを削除されてしまったり、上書きされてしまったりして、ナレッジを無くしてしまうこともあると思います。

ナレッジマネジメントシステムとは

ナレッジマネジメントシステムは、会社内、組織内の(個々人が蓄えている)企業にとって有益となる知識や情報を蓄積・共有し、社員全員で活用できるようにするためのシステムです。

組織内のナレッジを蓄積・共有・活用することで、業務の効率化、品質向上、新商品・新サービスの開発等に役立てることができます。

主なナレッジマネジメントシステムには、以下のような機能があります。

  1. ナレッジの収集機能
    使いやすい入力画面が用意されていたり、入力画面を簡単に作成できる機能があります。
    また、ユーザ毎にナレッジを登録した件数を記録しているものもあり、登録数の多い社員を表彰する等のモチベーションを上げる施策に繋げられます。
  2. ナレッジの蓄積機能
    電子ファイルや入力された情報を格納するためのストレージを持っています。クラウドサービスのナレッジマネジメントシステムなら、独自のオンラインストレージを備えていたり、また、他のオンラインストレージと連携できるものもあります。
  3. ナレッジの検索・抽出機能
    蓄積したナレッジの中から適切なものを選び出すための検索機能があります。大量のナレッジが蓄積されていても活用されなければ意味がありません。ほしいものをピンポイント選び出させるような工夫がされています。

ナレッジマネジメントシステムを活用するには

ナレッジマネジメントシステムを使用することで、次のメリットを得ることができます。

  • ナレッジの共有を社員に浸透させることができる
    ナレッジを共有するためのルールが定められていないと社員がどのようにすれば良いかが分からず、社員全体での共有はできないと思われます。また、ナレッジを共有するという意識が社員になければ、共有化は進みません。
    ナレッジマネジメントシステムは、最も効率的な手法(ベストプラクティス)を研究して開発されているので、効率的な共有化ができるような仕組みが備わっています。また、社員のモチベーションアップに繋がる仕組みも備わっているものもあります。
  • ナレッジの共有を効率化できる
    紙を使っての資料作成には手間が掛かり保管場所も用意しなければなりません。探し出すのも一苦労です。WordやExcel等の電子ファイルで作成していても、きちんと管理されていなければ、ほしい情報を見つけるのに時間が掛かってしまいます。
    ナレッジマネジメントシステムには、使いやすい入力画面、電子ファイルを保管するストレージ、ナレッジをカテゴリー毎に分けたりセキュリティを付けたりする様々な管理機能、強力な検索機能等の効率的にナレッジを共有できる仕組みが備わっています。

しかしながら、ナレッジマネジメントシステムのソフトウェアやクラウドアプリをただ単に導入するだけでメリットが得られる訳ではありません。システムを導入し、社員全員で活用して初めて最大限のメリットを得ることができます。

中小企業にてナレッジマネジメントシステムを活用するには次のことが重要だと考えます。

蓄積するナレッジの確認

  • 社内にどんなナレッジががあるか、また、どんなナレッジを共有または継承していきたいかを確認する必要があります。ナレッジを持っている本人はそれが重要なナレッジであることに気付いてないケースもありますので、複数人で確認し合うことが大切です。
  • ナレッジを持っている社員、それを共有したい社員とで話し合いどのような形式でナレッジを蓄積すれば良いかを確認する必要があります。

ナレッジの収集・蓄積を徹底する

  • ナレッジマネジメントシステムに、ナレッジを蓄積することを徹底する必要があります。ナレッジがほしい側は比較的にシステムを使うようになりますが、ナレッジを与える側は業務の忙しさ等にかまけてナレッジの登録を怠りがちになります。ナレッジの登録を徹底するようにルール作りやモチベーションアップのための施策も行う必要があります。

ナレッジマネジメントシステムの活用を推進する

  • ナレッジマネジメントシステムからナレッジ取得を徹底させます。初めは、ナレッジを知っている社員に聞く方が早いと感じるかもしれません。利用していく内に操作に慣れるのでナレッジを知るまでの早さは変わらなくなると思います。いつでもどこでも必要な情報を取り出せる便利さも感じられるはずです。
  • どのナレッジがよく参照されているかが分かれば、どのナレッジが自社にとって有効なのかということも分かってきます。有効なものだけをまとめて、社内教育や新人教育等で能動的に共有することで、さらなる効率化にも繋がります。

気を付けること

ナレッジマネジメントシステムは、使いこなすと競争力を高める強力なシステムになり得るのですが、最低限気を付けなければならないリスクもあります。

  • 提供各社によって、ナレッジマネジメントシステムに備わっている機能が大きく異なります。
    ナレッジマネジメントシステムは、会社独自の様々な機能が備わっており、バラエティに富んでいます。自社はどんなナレッジをどのように共有したいか、共有化に対して社員はどのような考えを持っているかを調査し、それに合ったシステムを見つける必要があります。また、多機能なナレッジマネジメントシステムほど料金が高くなるので、使わない機能があると費用が無駄になります。
  • ナレッジマネジメントシステムの効果が出るまでに時間が掛かる
    ナレッジマネジメントシステムの効果が発揮されるためにはナレッジを多く蓄積する必要がありますが、それには時間が掛かります。計画的にナレッジを蓄積し、時間を掛けて利便性を高めていく必要があります。

ナレッジマネジメントシステムには、入力画面の作成、保存フォルダの作成、セキュリティの設定等に費用が掛かるものも多いです。自社のナレッジ共有に関する調査をしっかり行い、最適なソフトウェアやクラウドアプリを見つけることが重要になります。

弊社は、アプリ・ソフトウェアの導入自体の支援だけで無く、デジタル化で経営課題をどのように解決していくかの計画立案や運用改善の支援も行っています。企業のデジタル化に課題があり解決させたい場合には、弊社が支援致します。お気軽にお問い合わせください。

弊社は、ナレッジマネジメントシステムの販売会社と関係があるわけでは無いので、公平な観点でナレッジマネジメントシステムの導入効果を評価することができます

投稿者プロフィール

中小企業診断士/ITコーディネータ事務所オフィスキシガミ 岸上智広
中小企業診断士/ITコーディネータ事務所オフィスキシガミ 岸上智広