DX事例(製造業のIT導入事例)

DXを考えるきっかけとして

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を耳にしませんか?
DXとは、簡潔に述べると「ITを活用し経営を変革させ競争優位を確立すること」になります。
(コラム「DXとは一体何なのか」もご参照ください。)

経営を変革させるようなITには、現在、代表的なものとして、AI、IoT、ビックデータ、VR、ARなどが挙げられます。

しかしながら、これらAI、IoT、ビックデータ、VR、ARを活用して経営を変革させるといっても、何に活用できるか一から考え出すのはとても困難だと思います。そこで、DX事例を参照にして使えそうなものを検討してみてはどうでしょうか。

経営変革の参考になるDX事例をまとめました。DXを推進を考える一つのきっかけになれば幸いです。

DX事例(企業事例)の紹介

DXの企業事例をまとめました。企業戦略やビジネスモデルを検討する上で参考になると思います。

食料品

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.D2C領域におけるプレゼンスを強化

※D2C(Direct to Consumer)とは、自ら企画、生産した商品を広告代理店や小売店を挟まず、消費者とダイレクトに取引する販売方法を指します。

会社名

アサヒグループホールディングス株式会社

目的/施策

消費者のトレンド情報や素材を機械学習させると同時に、主観に左右されない客観性のある商品パッケージデザイン案を生成するためのAI技術を開発しています。並行して、パッケージ調査高度化を目的とした棚割り空間を再現するためのVRプラットフォームを開発しています。この2つの新技術を連動させることで他社に先駆け、消費トレンドの把握から商品開発までの開発工程を高速化し、消費トレンドの多様化に 柔軟な商品開発工程の高度化を目指しています。

また、消費者のライフステージに寄り添ったコミュニケーション関係を構築することを目的としたグループ顧客データ分析基盤最適化プロジェクトを実施している。

2.工場の徹底した省人化/自動化

会社名

日清食品ホールディングス株式会社

目的/施策

工場内に700以上の品質管理カメラを配置、「NASA室」と呼ばれる自動監視管理で全製造工程をモニタリングすることにより、不良品発生率は100万食に一つ以下、宇宙ロケット打ち上げの安全基準よりも高い品質を目指しています。

また、業務システムを8割超削減と徹底的なスリム化を行い、「ランザビジネス:バリューアップ」のIT予算比率が2019年度までは「9:1」であったところ、2020年度には「6:4」まで改善、投資効率や生産性も大幅に向上させています。
※ランザビジネス:現行ビジネスの維持・運営、バリューアップ:ビジネスの新しい施策展開
DXを成し遂げるには企業価値を向上させるバリューアップのビジネスにも取り掛からなければなりません。

3.ロジスティクス業務改革で物流クライシスに対応

※物流クライシスとは、ECサイトの利用やネットショッピングの利用拡大によって増加した宅配荷物量に対して、宅配会社の人手が足りずサービス水準の維持が難しくなっている問題です。

会社名

サッポロホールディングス株式会社

目的/施策

AI 技術を活用した商品需給計画システムを2019年8月より導入し、ロジスティクス業務改革に取り組んでいます。カテゴリの異なる商品の業務フロー・システムを統一し、グループ会社・運送会社・お取引先様と情報を連携した計画主導型のロジスティクス業務標準化を推進しています。

この取組により、トラックドライバー不足、事業構造の多様化、業務の属人化といった諸課題を克服し、在庫の適正化、物流の平準化、ロジスティクス担当者の働き方改革を実現します。

繊維製品

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.デジタルものづくりで先端材料を創出

会社名

東レ株式会社

目的/施策

シミュレーション(理論計算)による本質解明やインフォマティクス(データ科学)による予測設計を駆使した実験に先立つ材料設計によって、研究開発を飛躍的に効率化します。さらには、成形加工プロセスをVRでシミュレートするバーチャル試作を活用してお客様と開発イメージを共有し、目標設定から市場投入まで一貫した最適設計を実現することで、顧客のニーズに応え社会に必要とされる素材をいち早く提供します。

また、検査・監視等の単調な業務をAI自動検査・監視システムで代替させて、作業者をより付加価値の高い業務にシフトし、品質と生産性を向上する取組を進めています。

2.データを利活用した検査工程の自動化

会社名

帝人株式会社

目的/施策

膜状素材製造における欠点検査自動化の課題を解決するべくディープラーニングを用い、検査工程の自動化を実現するとともに、工数の削減と検査基準の標準化を達成しています。

化学

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.AI技術を活用した診断支援サービスの構築

会社名

富士フイルムホールディングス株式会社

目的/施策

画像診断ワークフローを半自動化し、迅速性・正確性を向上、医師の負荷を軽減しつつ、診断により多くの時間をかけられるよう支援しています。

2.消費者インサイトを探り商品戦略とテーマ探索への活用を推進

※消費者インサイトとは、消費者自身が気づいていない本音や動機です。

会社名

ユニ・チャーム株式会社

目的/施策

SNSやeコマース等の口コミや投稿データを収集、蓄積、統合するデジタル基盤を活用することによって、早く、広く、深く、消費者の理解の促進に繋げ、商品上市後の消費者インサイトの検証スピードをアップし、商品戦略の成功確率を高めます。また幅広い世代のデータを活用し新しい市場機会発見のスピード向上を目指します。

また、最先端テクノロジーを活用した、スマート工場では設備の監視・制御システムや資材搬送の自働化、箱詰め工程のロボット化で製造原価の低減・抑制に努めています。

3.DX技術でビジネスモデル変革、働き方改革、生産性向上

会社名

株式会社三菱ケミカルホールディングス

目的/施策

RPA・AI-OCR等の組み合わせにより、原料購入や出荷手続きの自動化などで、事務作業時間の削減しる働き方改革・生産性向上に取り組んでいます。

また、医薬品事業における早期の新薬開発のためのプロセス改善として、多大な時間と熟練者のノウハウを必要としていた臨床試験の計画立案にAIを活用し、開発期間短縮、コスト削減、成功確率向上に取り組んでいます。

4.肌状態の高度な予測アルゴリズムの開発および先端技術を活用した業務の効率化の実現

会社名

花王株式会社

目的/施策

皮脂RNAモニタリング技術と機械学習・深層学習技術を融合させた肌状態の高度な予測アルゴリズムを開発中です。これにより、これまでの肌測定・解析技術では把握できなかった肌内部の状態を知ることや、将来の肌ダメージのリスク評価が可能になります。さらに遺伝情報をもとにパーソナライズされた美容アドバイスやスキンケアを提供することで、肌状態の改善・予防への道も拓けます。

また、社内の遠隔コミュニケーションのスムーズ化と活性化を図り、対話によるイノベーションを創出するため、新たに、リアルなWEB会議システムと分身ロボットを導入しており、リモートワークによる業務の効率化とイノベーション創出をサポートする職場環境を目指しています。

医薬品

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.デジタルを活用した革新的な新薬創出

会社名

中外製薬株式会社

目的/施策

・AIやロボティクス等の技術活用で、革新的新薬の創出の成功確率の向上、開発期間及びコスト削減を実現しています。

・ウェアラブルデバイスを用いて子宮内膜症の患者さんの痛みを可視化する革新的な医療ソリューション等の開発を目指しています。

・様々なRWDの解析を通じた、承認申請戦略の拡大、臨床開発戦略の刷新、実臨床におけるエビデンスの高度化を推進しています。
※RWD(リアルワールドデータ)とは、診療報酬請求(レセプト)データやDPCデータ、診療録(電子カルテデータ由来)、健診データなどの実診療行為に基づくデータ、またはそのデータベースのことです。

石油・石炭製品

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.データ分析プラットフォームを実現し、「リアル」と「デジタル」の融合

会社名

ENEOSホールディングス株式会社

目的/施策

データ分析プラットフォームを中心としたデジタルプラットフォームの構築を進めています。社内外のデータを融合し、需要予測や異常検知といった基盤事業の効率化だけでなく、顧客分析に基づく新たなビジネス展開の取組を加速します。

ゴム製品

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.車両運行情報とタイヤ情報の解析で新商品開発およびAIで新素材の開発

会社名

株式会社ブリヂストン

目的/施策

欧州を中心に約90万台の車両と繋がっており、これらの車両運行情報と当社のタイヤモニタリングシステムtirematicsによって得られるタイヤ情報を組合わせて解析・活用することで、お客様の困り事を解決するより幅広いソリューション提供が可能となるだけでなく、蓄積されたデータをエンジニアリングチェーンにフィードバックすることにより、更なる商品の開発が可能となります。
※エンジニアリングチェーンとは、製品の企画から、製品設計、工程設計、生産準備までの設計部門を中心とした業務の連鎖のことです。

また、AI、マテリアルインフォマティックスなどの最新デジタル技術を導入することで、短期で高次元の触媒デザイン・分子設計を実現しました。これまで匠のノウハウに頼っていた革新素材の効率的開発=業務変革が可能となり、ゴムと樹脂を分子レベルで結びつけた世界初の次世代ポリマー「SUSYM」の開発に成功しました。
※マテリアルインフォマティックスとは、統計分析などを活用したインフォマティクス(情報学)の手法により、大量のデータから新素材を探索する取り組みです。

ガラス・土石製品

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.デジタルの力を使って「モノ売り」から「コト売り」へのビジネスモデルの転換

会社名

AGC株式会社

目的/施策

欧州の子会社では、デジタルの力を使って「モノ売り」から「コト売り」へのビジネスモデルの転換に挑戦しています。Coating on Demandと呼ばれるこのビジネスモデルでは、お客様の建築デザイナーとともに建築用ガラスの耐熱性能(快適性)や色(意匠性)をシミュレーションし、そのデータを使うことで試作品の提供を従来の日単位から時間単位に短縮することに成功しました。これによってデザイナーは自らの思いがどのようにビルや街づくりに反映されるのか、その場でイメージすることができます。

鉄鋼

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.ビッグデータ・AI活用による設備異常予兆監視

会社名

JFEホールディングス株式会社

目的/施策

多種多様な機器や計器から構成される設備の監視対象項目は数百以上と膨大になり、それらの関係性を効率的・網羅的に解析し、異常度合の経時変化をマップ化し、製造現場で容易に閲覧できるようにしています。異常度が高くトラブルの恐れのある部分に対し適切な補修等の対策を講じることにより、異常発生を未然に抑止でき、設備稼働率の向上が可能となります。

機械

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.モノ(機械の自動化・自律化)とコト(施工オペレーションの最適化)

会社名

株式会社小松製作所

目的/施策

お客さまが直面している深刻な労働力不足の課題を解決し、「安全で生産性の高いスマートでクリーンな未来の現場」をお客さまと一緒に創造する建設現場向けソリューション「スマートコンストラクション」を推進しています。

2020年4月より、新たに4つのIoTデバイスと、8つのアプリケーションを導入した「デジタルトランスフォーメーション・スマートコンストラクション」の国内導入を開始し、従来取り組んできた、建設生産プロセスの部分的な「縦のデジタル化」だけでなく、施工の全工程をデジタルでつなぐ「横のデジタル化」を進めることで、現場の課題に対する最適解を容易に求めることを可能とします。

2.顧客体験価値の再構築と定型業務の自動化

会社名

THK株式会社

目的/施策

お客様とのコミュニケーションプラットフォーム「Omni THK」は在庫品検索、短納期品入手、製品選定、CAD・見積取得などのサポートに加え、お客様の製品管理情報とTHKの製品情報の紐付管理機能など新たな顧客体験価値を提供しています。社内ではお客様の発注から当社の出荷までを人を介さず一気通貫で自動で流れる仕組みの構築を図り、飛躍的な生産性向上と顧客満足度向上を目指しています。

また、製造業向けIoTサービス「OMNI edge」は、機械要素部品の状態の見える化により、お客様の保全業務の効率化、在庫管理コストの削減、設備稼働率の向上を実現し、生産計画のスムーズな遂行をサポートします。

3.デジタルを活用した火力発電所の保守・運転最適化

会社名

株式会社IHI

目的/施策

運用経験が豊富なお客さま向けに、デジタルツインを活用したボイラ保守高度化や、AIを活用した運転最適化等のサービスを提供し、発電設備の効率低下防止に取り組む他、トラブルによる計画外停止が多い海外のお客さま向けには、マレーシアの拠点を活用し、独自の異常検知アルゴリズムを活用した遠隔監視サービスや、統計解析手法を活用したメンテナンス計画の最適化提案を行う等、稼働率向上に対する技術支援を行なっています。
※デジタルツインとは、現実世界に実在しているものを、デジタル空間でリアルタイムに再現することです。

電気機器

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.画像IoT×オペレーションによる介護現場ワークフロー革新

会社名

コニカミノルタ株式会社

目的/施策

属人化されたノウハウに運営を依存している介護業界を、画像IoT によるデータに基づいた科学的なオペレーションに革新します。導入前業務診断による現場の課題顕在化、データに基づくオペレーションの核となるケアディレクターという新職種提案と育成プロセスの提供、更にデータによる遠隔支援を継続する等、教育を軸としたサービスで顧客と伴走し続けることで顧客と被介護者の満足度向上と顧客生涯価値最大化を目指します。

輸送用機器

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.遠隔軌道監視サービスで物流網の安定化と事業スループット拡大

会社名

川崎重工業株式会社

目的/施策

車両製造事業の中で培ってきた軌道計測技術を活かし、鉄道軌道の状態を高頻度に測定、劣化状態を予測するサービス事業を開発しています。鉄道事業者は本サービスにより、軌道起因の脱線事故を減らし、保守の最適化・効率化の実現、コストダウンだけでなく、物流網の安定化と事業スループット拡大にも寄与することができます。

精密機器

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.DXによる「医・食・住」のイノベーション

会社名

株式会社トプコン

目的/施策

・眼科専門医以外でも取り扱えるフルオート検査機器とICTを活用して、遠隔診断やAI自動診断を可能にする仕組みを構築しています。眼疾患の早期発見・早期治療に貢献しています。

・農機の自動運転システムやレーザー式生育センサーにより、これまで経験と勘に依存していた計画-種まき育成-収穫の営農プロセスをデジタルデータで一元管理し、生産性や品質の向上を実現しています。

・3次元計測システムやセンシング/制御技術の活用により建機を自動制御できるICT自動化施工システムを開発しています。”測量-設計-施工-検査”のワークフローを3Dデジタルデータで一元管理し、データ連携する事で、建設工事のワークフローをDXソリューションで効率化し、人手不足の解消と生産性向上に貢献しています。

その他製品

情報は、デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2020(経済産業省)より抜粋し編集しています。

1.学習データを収集・分析・可視化

会社名

大日本印刷株式会社

目的/施策

デバイス(デジタル・紙)に関わらず、きめ細かな学習データを収集・分析・可視化することで新たな価値の創出を実現するトータルサービスを構築しています。教員にとって負荷の大きい採点業務をデジタル化することで負担感を軽減し、自動集計される学習データから、児童・生徒一人ひとりの学習課題の分析が可能となります。この分析結果をもとに、個別に最適化した学習課題や教材を提供することで、より効果的な指導に繋げることが可能となります。

ここで挙げたものはDX事例の一端です。今後もITの進歩により、新たなDX事例が生み出されていくことでしょう。