データ活用によるDXを簡単解説

近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を耳にしませんか?
DXとは、簡潔に述べると「ITを活用し経営を変革させ競争優位を確立すること」になります。
(詳しくは、コラム「DXとは一体何なのか」をご参照ください。)

本コラムでは、データ活用によるDXについて、簡単に解説します。

データ活用の効果事例

先日、日経電子版オンラインセミナーに参加しました。そこでデータマネジメント製品ベンダーの米インフォマティカ(Informatica)が、データ活用事例として下記の企業を紹介していました。

・PVN(Calvin Klein等のブランド)はサイトでの87%増加を含め、デジタルの総売上高を50%以上増加させました。
・Pumaの直営販売のeコマースは60%以上成長しました。
・食料品チェーンのオペレーターであるKroger Co.は、2020年度第2四半期のオンライン売上高が127.0%増加したと報告しました。
・Union Bankでは、DXの結果として収益が12倍増加しました。顧客ローン承認は4-6週間から3分へ短縮、Know-Your-Customerに関するデータ品質を35%から100%向上させています。
・糖尿病の研究組織であるJDRFは、1000万の顧客の中から、関与できていない見込み顧客を100万件近く発見し、寄付金やROIの向上を実現させました。生産性も最大40%向上させました。
・油田探査ビジネスを主とする多国籍企業では、99.99%の正確な材料データ管理を実現し、在庫管理を改善しながらコストとリスクを削減しています。

※筆者は資料を持っていません。詳しく知りたい方は、インフォマティカにご確認ください。

データの利用レベル

一言にデータを利用すると言っても人により認識が違ってくると思います。そこでデータを解釈するためのフレームワークであるDIKWモデルを使って解説します。

このモデルはデータ利用の状態を一定のレベル毎に分けており、4つのレベル
Data(データ)
Information(インフォメーション)
Knowledge(ナレッジ、知識)
Wisdom(ウィズダム、知恵)
の頭文字をっています。

このモデルを用いてレベル毎に考えるとどのようにデータ利用していけばよいか見えてきます。

Data:整理されていない状態

情報が記録されただけの段階です。
Data段階の例を次に挙げます。

部品製造会社
・製造部門では、部品ロットごとに製造年月を記録。
・品質部門では、部品ごとに耐用年数を記録。

組立会社
・飛行機ごとに、構成部品ロットを記録。

航空会社
・飛行機ごとに、フライト実績を記録。
・飛行機ごとに、フライトスケジュールを記録。

Information:何らかの基準で分類された状態

DataとDataを繋ぎ合わせて新たな情報として見ることができる段階です。
Information段階の例を次に挙げます。

部品製造会社
・部品ロットと製造年月日と耐用年数を繋げて、部品ロットの交換時期を算出。

Knowledge:Informationから規則性などが分かる状態

Informationを組み合わせ規則性などが分かる段階です。
Knowledge段階の例を次に挙げます。

・部品製造会社の部品ロットの交換時期
・組立会社の飛行機ごとの構成部品ロット
・飛行機ごとのフライト実績やフライトスケジュール
これらの情報を組み合わせると、○○空港に到着予定の飛行機の部品を交換すべきかどうかがわかります。

Wisdom:Knowledgeを活用して判断できる状態

Knowledgeより様々な判断が下せる段階です。
Wisdom段階の例を次に挙げます。

・ある飛行機はあと2回フライトし○○空港に到着したら部品を交換する必要があるので、今発注すべきであると判断
この判断の根拠はKnowledgeで確認できます。

レベル別にデータ利用状態を解説しましたが、なんとなくイメージできたのではないでしょうか?
今まで使えるかどうか分からず記録していたデータは実は宝の山です。Wisdomまで利用レベルを上げることができれば競合他社を圧倒する優位性を得ることが可能です。

データ利用の課題

データを利用することの有益性は分かっているのですが、実際に行うにはいくつかの課題があり、簡単には利用できません。

データを管理していない

データを確認してみると、実際問題次のような事態が生じます。
・記録しているはずだが、どこにあるかわからない
・システムに記録されているはずだが、取り出し方がわからない
・意味ないデータと思い真面目に記録していない
・データはあるが間違いをチェックしていない

使う目的がわからない、目的が無いデータは、往々にして真面目に管理されていません。利用するにはまずデータを整理整頓することから始める必要があります。正直大変な作業です。

データをどう加工するか分からない

いざ、データを加工するとなると、次のような事態が生じます。
・目的があっても、どういうデータに加工すればよいかわからない
・そもそもデータの加工方法がわからない(Excelを使う? BIツールを使う?)

データを加工するには、経験であったり、スキルであったり、センスであったり、一定の能力を持った人材が必要になるはずです。

データを使ってくれない

データが加工できたとしても、次のような事態が生じます。
・従業員がデータを使った業務プロセスを行わない(業務プロセスを変えない)
・そもそも従業員がデータを疑って使わない

従業員の中にはデータを信じない方がいると思います。データの加工の仕方、データの解釈の仕方で異なる結果がでることもあり、不信に思ってしまうのも仕方がないことです。筆者が昔いた部署でも、システムで加工したデータは使われず、自分たちがExcelで作ったものばかり使用されていました。(現在は違うと思いますが)

これらの課題を解決するには、システム導入だ!!って考えている方がいらっしゃるかもしれません。残念ながらシステム導入で即座に解決って訳にはいきません。

システム導入は必須と考えますが、その上で次のことを頭に入れて対応していくことが大切です。
・既存データの整理整頓は人海戦術もやむなし、新しいデータ集めはシステムで自動化
・データを加工するには人材育成が必須、また、BIツールの導入で効率化
・データは加工方法も提示
・まず小さくてもデータを利用し効果を上げた実績を作り広めること

DataレベルをWisdomレベルへ引き上げるのはことはとても大変だとは思います。しかし中小企業でも実現した企業もあり驚くべき効果をあげています。(「予測的中率95%超」実現。データ解析の力で経営を改善した 伊勢の老舗食堂『ゑびや』が「BEST DX COMPANY賞」を受賞|TECH PLAY Magazine [テックプレイマガジン]
一歩ずつでも進めてみてはどうでしょうか?

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