中小企業の業務分析のやり方~業務一覧と業務フロー~

業務一覧と業務フロー

中小企業の業務分析のやり方~業務一覧と業務フロー~

中小企業での業務分析の必要性

人員が不足しがちな中小企業において、業務を如何に効率化するかが重要となってきます。無駄な業務は省き、必要な業務でも掛かる手間ひまをなるべく少なくしたいものです。

何度も繰り返す内に慣れによる効率化を図れる業務もあれば、いわゆる改善会議を行い複数人で検討しながら効率化の手段を見つける業務もあると思います。

しかしながら、実行している本人の頑張りだけでは効率化の限界があります。限界を破るには、自部署、関連する他部署、また会社全体を巻き込んでの効率化が必要になります。例えば、現在なら様々なITが世の中にあり、ITを使えばどのような業務でも効率化することができるはずです。

会社全体で効率化を行うには、業務全体を把握するための業務分析が必要になります。そして、業務分析の必要性を従業員が気付くことはまず無く、経営者が気付き、(外部のサポート受けて)実施する必要があります。

こんな課題を抱えていたら業務分析をすべき

  • 社長の業務が多すぎる
    中小企業あるあるです。社長は本来業務ではなく経営を行う必要があるのですが、そこに手が回っていない状態です。ちょっと自慢げに話す方もいらっしゃいますが、企業運営的にとても危険な状態ですので、早く改善しないといけません。
  • 生産性が悪い
    生産性が悪いと言うことを社長が自ら気付いていることもありますし、財務分析より確認できることもあります。従業員数に対してアウトプットが少ないと感じましたら、業務のどこかに非効率なものが含まれているかもしれません。
  • 業務の引き継ぎができない
    業務の手順が人によって違っていることがあります。また、特定の人にしか分からない業務を抱えていることもあります。そうなると、別の従業員がそれらの業務をどのようにすれば良いかわからず引き継ぎができなくなります。引き継ぎができないと、従業員が辞めた際に業務が回らなくなります。また、業務のローテーションによる従業員の教育もできなくなります。
  • IT化をしたい
    どの業務をIT化するか、IT化して効率が良くなる業務はどれかを検討する際に業務分析が必要となります。業務分析をしないとIT化で本当にやりたいことが見えず、最悪の場合、IT導入の効果が発揮されない場合もあります。

業務分析のやり方

1.業務の範囲の決定

業務分析を行うためには、まず対象となる業務の範囲を定義します。業務分析を行う目的があるはずです。その目的に合わせた範囲に絞ります。例えば、社長の業務の多さをなんとかしたいのであれば社長の業務に絞って分析を行います。

2.業務一覧表の作成

対象となる範囲内で行われている業務の一覧表を作成します。ただ単に一覧表を作るだけでも業務をかなり整理できます。

3.業務フロー図の作成

業務一覧表に挙げた業務を、どのような手順で実施しているかフロー図に落とし込みます。フロー図を作成する過程において、業務を実施している本人が普段気にしていなかった無駄な作業に気付くこともあり、フロー図を作成するとかなり分析が進みます。

4.業務の評価

業務一覧表と業務フロー図を使って業務を評価します。どのような評価をするかは、業務分析の目的によって異なります。例えば、社長の業務の多さをなんとかしたいのであれば、社長じゃなくてもできる業務や作業を見つけ出して評価の点数をします。

5.業務改善の提案

業務を改善するための提案を行い、改善案の優先度や実装方法を決定します。

私は業務の改善を考える際には、ECRSの原則(改善の法則)を意識しています。ECRSの原則とは次のことです。①~④の順番で業務のやり方を変えることができないかを検討します。
①Eliminate:やめる、捨てる
②Combine:一緒にする
③Replace またはRearrange:置き換える、順番を変える
④Simplify:単純化する

業務の洗い出し

業務分析の中で苦労するのが掛かるのが業務の洗い出しだと思います。一度でも業務の洗い出しを行ったことがある企業であれば資料があり、それを元に進めることができるのですが、大半の中小企業では一から始める必要があります。

具体的な手法は次の2つです。

①業務に携わっている人にインタビューを行い、業務の実態を把握します。
②業務に関する資料を収集し、業務の内容を把握します。

他に、業務を実際に観察し、業務の実態を把握する方法がありますが、少し現実的ではありません。

①②の手法はそれぞれ難点があります。

①インタビューでは、業務に携わっている人のインタビュー時間の確保が難しいことや協力的になってくれないことがあります。インタビューよりご自身の業務をどうしても優先してしまいます。また、業務を根掘り葉掘り聞くことは抵抗感をもたれやすいです。そのため、インタビューを行う際には経営者から社員に事情を説明して不信感を拭っておく必要があります。

②資料の収集では、十分の資料が揃わないのが現実です。資料だけで業務を把握することができません。基本的は資料はインタビューの補足程度と考えておく必要があります。

洗い出した業務は、最終的に業務一覧表と業務フローにまとめます。

業務一覧表

業務一覧表とは、業務を体系的にまとめたものです。そのテンプレートは様々ですが、大体が3~4段階(大分類、中分類、小分類、詳細)で業務を区分してまとめて、その業務をどこの部署が(もしくは誰が)行っているのかを記載します。調査目的によってはいつ、どのように行われているのかや、どんなシステムを用いてるのか等も記載します。

業務一覧表の作成に際して、よくどれくらいの粒度(細かさ)でまとめたら良いのか迷うことがあります。残念ながらベストな答えはありません。もう一つの資料である業務フロー図と整合性が合っていれば、まとめる粒度にあまりこだわる必要はないと思います。

業務一覧表サンプル

業務フロー図

業務フロー図とは、ある業務を開始から終了までの一連の工程を図解化したものです。業務の流れや手順、決定や承認等の役割や権限、業務の選択肢や分岐等を示すことで、業務プロセスの全体像を把握しやすくします。一般的にフローチャートを用いて図解化します。

業務フロー図の作成に際して、よく特定の場合には追加作業がある等の例外的な作業が見つかることがあります。その場合は、業務分析の目的に応じて業務フロー図を別に作成するか、それとも、一般的に行われる業務フローに注釈として補足するかで対応します。

業務フロー図サンプル
業務フロー図サンプル

業務分析を行う際の問題

業務分析は、業務を効率化するためには必要不可欠なものと考えています。しかしながら、業務一覧表や業務フロー図を作っている中小企業はとても少ないと思います。

中小企業にとって業務分析を行うには次のことが問題になると思います。

  • 業務一覧表や業務フロー図を作るための社内工数を取ることができない
  • 業務分析を行うためのスキルや経験が無い

業務分析が必要だと認識していても「そもそも業務が忙しくて効率化したいのに、効率化するのに業務が増えたら本末転倒だ」と尻込みしてしまうかも知れません。また、業務分析に必要なスキルは、業務で使うスキルとは全く異なるので身につけている従業員は自社内に居らず、行いたくてもできないのが現状ではないでしょうか?

業務分析を自社の従業員が行っている事業者は少なく、ほとんどが外部コンサルタントに依頼していると思います。私が昔勤めていた大手電機メーカーでさえ外部に依頼していました。社内工数やスキルを補うためでもありますがそれら以外にも、客観的な評価ができるということがポイントになっていると思います。そのような理由から費用は掛かりますが、業務分析は外部コンサルタントに支援してもらうことをお勧めします。1%の改善を続けると1年間(365日)でその効果は37.8倍になります。長い目でみれば、業務を改善することにより得られるメリットの方が多くなります。

弊社は、業務分析だけでなく、分析から見つかった様々な課題に対する解決施策の検討、施策実施までの伴走型支援を行っています。経営課題の解決にお悩みの場合は、弊社が支援いたします。お気軽にお問い合わせください。

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中小企業診断士/ITコーディネータ事務所オフィスキシガミ 岸上智広
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