中小企業も取り組む必要あり!!利益を出すための原価管理~標準原価と実際原価~
中小企業も取り組む必要あり!!利益を出すための原価管理~標準原価と実際原価~
目次
原価管理とは
原価管理とは、企業が製品やサービスを生産・提供する際のコストを算出し、利益を生むための原価を管理することを指します。企業は原価管理を行うことによって、製品やサービスの原価を正確に把握することができ、収益性を向上させることができます。
原価管理の重要性
近年、物価の急激な上昇に伴い原価管理の重要性が高まっています。こんな経験はないでしょうか?
- 物価の急激な上昇に伴い、いくらものを売っても利益がでなくなった。
- 取引先から、値上げの妥当性を求められるが上手く説明できない。
- 値上げしたにも関わらず利益がでない。
少し前までは値上げは全くできず、利益を増やすにはコスト削減か、販売量の増加を考えることが当たり前でした。最近は、世の中の風潮が変わり、良くも悪くも値上げをできる環境になっています。
しかしながら、このような環境の中、「値上げしたにも関わらず利益がでない」という問題を抱える企業も少なからずいらっしゃいます。
要因はいくつかあると思いますが、私は原価管理ができていないことが大きいと思っています。適切な値上げ金額を見つけるには、目標とする利益の金額と正確な原価の金額が必要です。そして、正確な原価は、しっかりと原価管理をすることにより導き出されるからです。
適切な値上げができていない場合は、自社の原価管理を見直すことから始める必要があると思います。
原価管理手順
原価管理の具体的なやり方は、原価の目標を決め、原価の実績を計測し、目標と実績を比較することで、改善点を見つけ出し、施策を打ちます。そうすることで実際の原価を目標の原価に近づけます。
原価管理の手順
- 標準原価を設定します
- 実際原価を算出します
- 原価差異を分析します
- 原因調査と対策を行います
標準原価
標準原価とは、製品やサービスを生産する際の理論上のコストのことです。過去の実績や、市場調査から導き出される目標にすべき原価となります。
標準原価計算
標準原価=①標準直接材料費+②標準直接労務費+③標準製造間接費
①標準直接材料費=原価標準の直接材料費×製造個数(仕掛り分は進捗度を考慮)
原価標準の直接材料費=標準単価×標準消費量
②標準労務費=原価標準の直接労務費×製造個数(仕掛り分は進捗度を考慮)
原価標準の直接労務費=標準賃金×標準時間
③標準製造間接費=原価標準の製造間接費×製造個数(仕掛り分は進捗度を考慮)
原価標準の製造間接費=標準配賦率×標準時間
原価標準は製品1個当りの標準原価のことです。
注意が必要ですが、製造間接費は必ずしも時間で配賦するのが良い訳ではありません。製造方法や費目によって、材料の消費量や生産数による配賦の方がよい場合もあります。
しかしながら、製造間接費の精度の高さを求めるあまりに計算を複雑化しすぎると、時間や労力が掛かり過ぎ(心理的に嫌になることにもなり)継続した原価管理を行うことに支障が生じる可能性があります。適度に簡略化することも必要です。
標準原価の計算例
1.原価標準例
直接材料 | 標準単価:500円/kg 標準消費量:1kg | 500円 |
直接労務費 | 標準賃率:1,000円/時 標準時間:1時間 | 1,000円 |
製造間接費 | 標準配賦率:500円/時 標準時間:1時間 | 500円 |
原価標準:500円+1,000円+500円=2,000円
2.標準原価例
100個製造したとすると、
標準直接材料費:500円×100個=50,000円
標準労務費:1,000円×100個=100,000円
標準製造間接費:500円×100個=50,000円
標準原価:50,000円+100,000円+50,000円=200,000円
標準原価計算のポイント
標準単価、標準賃率、標準配賦率及び、標準消費量、標準時間の値をどこまで適正なものにするかがポイントであり困難な点です。
標準原価を使って売値を決めるケースも多いと思われますので、標準原価を如何にして適正なものにするかが重要になってきます。
そのためには、実際の単価、賃率、配賦率、消費量、時間を計測し、適宜見直すことが必要です。
実際原価
実際原価とは、製品やサービスを生産する際に実際に発生したコストのことです。
実際原価計算
実際原価=①実際直接材料費+②実際直接労務費+③実際製造間接費
①実際直接材料費=実際単価×実際消費量
②実際労務費=実際賃金×実際時間
③実際製造間接費=実際配賦率×実際時間
実際原価の計算例
100個製造した場合の実績
直接材料費 | 実際単価:550円/kg 実際消費量:110kg | 60,500円 |
直接労務費 | 実際賃率:1,100円/時 実際時間:99時間 | 108,900円 |
製造間接費 | 実際配賦率:490円/時 実際時間:99時間 | 48,510円 |
実際原価:60,500円+108,900円+48,510円=217,910円
実際原価計算のポイント
実際原価を算出するための実績を計測すること自体が大変苦労する作業です。
加えて、上記の実際原価の計算例はかなり簡略化していますが、実際にはかなり細かく区分して考える必要があります。
材料により単価が異なり、人員により賃率が異なりますので、材料や人員毎に分けて算出する必要があります。
製品により材料の消費量や作業時間、製造間接費の配賦率が異なりますので製品毎に分けることも必要です。
人員の熟練度による作業時間の違いもありますし、機械故障等のイレギュラーな時間は除いて計算する等の特別対応も必要です。
このように実際原価の算出には考えることが多くかつ時間と労力を要するため、算出していない企業が多くあります。しかしながら、正確な原価が分からないと適切な売値を付けることができませんので、実際原価計算をしっかり取り組む必要があります。
原価差異の分析
標準原価と実際原価を計算したら、2つの原価の差異を計算し分析します。標準原価と実際原価の差異の要因を突き止め、改善策を講じることで原価の低減活動に役立てることができます。
原価差異の計算
標準原価 | 実際原価 | 原価差異 | |
直接材料費 | 50,000円 | 60,500円 | -10,500円 |
直接労務費 | 100,000円 | 108,900円 | -8,900円 |
製造間接費 | 50,000円 | 48,510円 | 1,490円 |
計 | 200,000円 | 217,910円 | -17,910円 |
この場合ですと、実際原価は標準原価よりも17,910円高くなっており、企業にとって不利益になっていることが分かります。また、直接材料費と直接労務費が高くなっているので、直接材料費と直接労務費の改善を検討する必要があります。
直接材料費の差異分析
直接材料費の差異分析では、差異を「材料価格による差異」と「材料の消費量による差異」に分けて考えます。
標準原価 | 実際原価 | 差異 | |
材料価格による差異 | 500円/kg | 550円/kg | -50円/kg |
材料の消費量による差異 | 100kg | 110kg | -10kg |
この場合ですと、標準原価より実際原価が、価格で50円/kg高く、消費量で10kg多くなっていることが分かります。そして、価格と消費量の改善を検討する必要があります。また、材料費の高騰等により改善する余地の無い場合もあり、検討の結果次第では、標準原価の標準単価や標準消費量を見直すことも必要です。
直接労務費の差異分析
直接材料費の差異分析では、差異を「工員の賃率による差異」と「作業時間による差異」に分けて考えます。
標準原価 | 実際原価 | 差異 | |
工員の賃率による差異 | 1,000円/時 | 1,100円/時 | -100円/時 |
作業時間による差異 | 100時間 | 99時間 | 1時間 |
この場合ですと、標準原価より実際原価が、賃率で100円/時高く、時間は1時間短くなっていることが分かります。そして、賃率の改善を検討する必要があります。また、賃率は改善する余地の無い場合もあり、検討の結果次第では、標準原価の標準賃率を見直すことも必要です。
製造間接費の差異分析
今回の例のように、作業時間による配賦をしてる場合には、「配賦率による差異」と「作業時間による差異」に分けて考えます。
標準原価 | 実際原価 | 差異 | |
配賦率による差異 | 500円/時 | 490円/時 | 10円/時 |
作業時間による差異 | 100時間 | 99時間 | 1時間 |
この場合ですと、標準原価より実際原価が、配賦率で10円/時安く、時間は1時間短くなっていることが分かります。そして、もっと改善する余地がないかを検討します。また、標準原価の配賦率や作業時間を、実際原価で見直すことも必要です。
原因調査と対策
原価差異の分析を行った後は、根本となる原因や改善点を見つけ施策を打ちます。企業により必要な対策は異なりますのでしっかりと検討する必要があります。
例えば、「材料の消費量を減らすために端材を出さないような工夫をする」とか、「作業時間を短くするため製造工程を改善する」とかです。
専門家のサポート
原価管理を行うことで適正な原価を把握することができます。しかしながら、その計算は複雑であり時間が掛かると思います。また、計算結果を詳細に分析するには専門知識が必要となります。
弊社は、中小企業の経営者に寄り添いながら経営課題の解決をサポートする伴走型支援を行っています。事業分析・財務分析の両面より経営を分析し、対話に時間を掛けて経営課題を見つけ出し、課題の解決までを支援しています。
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