IT導入補助金の準備作業まとめました
2021年4月7日より、2021年度のIT導入補助金の交付申請の受付が開始されました。
公式ページ IT導入補助金
本コラムでは、IT導入補助金の申請する前に、補助事業者の経営者が準備しておくべき事項をまとめています。
IT導入補助金を申請される中小企業の経営者のみなさま、ご参考にしてください。
申請・導入の3STEP
申請から導入まで大きく3つStepがあります。本コラムでは、Step1時点で行うべき準備作業をまとめています。
- Step1
- 支援機関(よろず支援拠点・商工会・商工会議所・ITコーディネータ等)に経営課題や課題解決のためのITツールを相談
- Step2
- 導入したいITツールやIT導入支援者を決定しIT導入支援者の支援のもとホームページから申請に必要な情報を提出
- Step3
- 審査を経て採択されれば、ITツールを導入・活用(補助事業の実施)
補足として
IT導入補助金の対象となるITツールは、公式ページに登録されているものに限ります。
IT導入支援者とは、中小企業・小規模事業者等のみなさまの生産性向上のために、ITツールの提案・導入及び事業計画の策定支援をはじめとし、各種申請等の手続きのサポートを行う者です。
Step1 IT導入支援者を決める前に準備しておくべき事項
- IT導入補助金事業への理解
- 「SECURITY ACTION」の1つ星もしくは2つ星の宣言
- 労働生産性を数値目標まで向上させる事業計画の策定
- (可能であれば)地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認の取得
- (可能であれば)地域未来牽引企業の選定されかつ目標を経済産業省に提出
- gBizIDプライムアカウントの取得
以上の準備を整えてあとで、ITツール・IT導入支援者を選定することになります。
1.IT導入補助金事業の理解
公式ページIT導入補助金に掲載されている「公募要領」の確認、事務所局への問い合わせ、また支援機関のサポートによりIT導入補助金事業を理解して頂くことになります。
公募要領の項目(目次)
1.事業概要
2.事業内容
3.交付申請方法
4.審査内容
5.留意事項
6.交付決定後から事業実施期間中に行うこと
7.各種問い合わせ
(別紙)1.関連事業紹介 2.業種・プロセス一覧
全ての項目を確認することになりますが、まず最初に確認しておくべき項目を次に挙げます。
申請類型の定義を確認する
2021年度のIT導入補助金には、通常枠のA・B類型、低感染リスク型ビジネス枠のC・D類型があります。類型の定義は複雑なものもありますので、しっかり確認しどの類型で申請することになるか把握しましょう。
公募要領(A・B類型版、C・D類型版)の2-3(3)交付申請を行う際に必要となるITツールの要件
公募要領(A・B類型版)の2-3(4)申請類型
項目 | A類型 | B類型 |
---|---|---|
補助金額 | 30万円~150万円未満 | 150万円~450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
プロセス数 | 1つ以上 | 4つ以上 |
賃上げ目標 | 加点項目 | 必須項目 |
補助対象 | ソフトウェア購入費用および 導入するソフトウェアに関連するオプション・役務の費用 | 同左 |
導入ツール要件 | 類型ごとのプロセス要件を満たすものであり、 労働生産性の向上に資するITツールであること | 同左 |
公募要領(C・D類型版)の2-3(4)申請類型
項目 | C-1類型 | C-2類型 | D類型 |
---|---|---|---|
補助金額 | 30万円~300万円未満 | 300万円~450万円以下 | 30万~150万以下 |
補助率 | 2/3以内 | 2/3以内 | 2/3以内 |
プロセス数 | 2つ以上 | 2つ以上 | 2つ以上 |
非対面化ツール | 必須 | 必須 | 必須 |
賃上げ目標 | 加点項目 | 必須項目 | 加点項目 |
補助対象 | ソフトウェア購入費用および 導入するソフトウェアの利用に必要不可欠な ハードウェアのレンタル費用 と関連するオプション・役務の費用 | 同左 | 同左 |
導入ツール要件 | 複数のプロセス間で情報連携し複数プロセスの非対面化や 業務のさらなる効率化を可能とするITツールであること | 同左 | テレワーク環境の整備に資するクラウド環境に対応し、 複数プロセスの非対面化を可能とするITつーるであること |
申請するソフトウェアについて確認する
申請するソフトウェアによってA・B・C・D類型が決まってきます。特にC類型とD類型は複雑ですのでしっかり確認しどのソフトウェアを申請することになるのか把握しましょう。
公募要領(A・B類型版、C・D類型版)の2-3<類型詳細>
A類型の場合
必ず(ITツールの要件のPコード)P-01~P-06の内、1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請することになります。
B類型の場合
必ず(ITツールの要件のPコード)P-01~P-07の内、4種類以上のプロセスを保有するソフトウェアを申請することになります。
C-1・C-2類型の場合
・業務の非対面化を前提とし異なるプロセス間で情報共有や連携を行うことで生産性向上に寄与するものとして、連携型ソフトウェアとして事務所局に登録されたITツールを申請することになります。
・必ず(ITツールの要件のPコード)P-01~P-07の内、2種類以上のプロセスを保有するソフトウェアを申請することになります。
D類型の場合
・業務の非対面化およびクラウド対応されていることを前提とし複数のプロセスにおける遠隔地等での業務を可能とすることで労働生産性の寄与するものとして事務所局に登録されたITツールを申請することになります。
・必ず(ITツールの要件のPコード)P-01~P-07の内、2種類以上のプロセスを保有するソフトウェアを申請することになります。
事業実施効果報告について確認する
2023年から2025年まで年1回、合計3回事業実施効果を報告する必要があるので、報告対象期間、報告期間、報告する情報を確認しましょう。
公募要領(A・B類型版、C・D類型版)の6-3事業実施効果報告について
報告対象期間と報告期間
年度 | 事業実施効果報告対象期間 | 事業実施効果報告期間 |
---|---|---|
1年度目 | 2022年4月1日~2023年3月31日 | 2023年4月~5月 |
2年度目 | 2023年4月1日~2024年3月31日 | 2024年4月~5月 |
3年度目 | 2024年4月1日~2025年3月31日 | 2025年4月~5月 |
報告する情報
・生産性向上に係る数値目標に関する情報(売上、原価、従業員数及び就業時間等)
・給与支給総額・事業場内最低賃金等
2.「SECURITY ACTION」の1つ星もしくは2つ星の宣言
「SECURITY ACTION」とは、情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。独立行政法人情報処理処理推進機構(IPA)が実施しています。自己宣言したことを表明するもので、審査や認定されるものではありません。
特段問題なく宣言できると思います。宣言後は、一層情報セキュリティ対策に力を入れましょう。
「SECURITY ACTION」申請方法紹介ページ:https://www.ipa.go.jp/security/security-action/mark/index.html
1つ星宣言について
「情報セキュリティ5か条」に取り組むことを宣言します。
2つ星宣言について
「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」を実施し、情報セキュリティ基本方針を定め、外部に公開したことを宣言します。
外部公開方法としては、「自社ウェブサイト」「会社案内」「パンフレット」などがあります。
3.労働生産性を数値目標まで向上させる事業計画の策定
労働生産性の伸び率の向上について1年後の伸び率が3%以上、3年後の伸び率が9%以上及びこれらと同等以上の数値目標を作成する必要があります。そして、IT導入後に事業実施効果報告にて生産性の伸び率を報告する必要があり、達成できていなければ、達成できなかった理由と達成するための改善策を報告する必要があります。
そのため、数値目標を作成するだけではなく、労働生産性を数値目標まで向上させるために事業計画の策定が必須になります。
労働生産性は、粗利 ÷ 総労働時間 で表されます。
粗利=売上ー原価
総労働時間=従業員数×年間勤務時間
労働生産性を向上させる方法は次の3つです。
①総労働時間を変えず、粗利を増やす
②粗利を変えず、総労働時間を減らす
③総労働時間を増やすが、粗利をそれ以上に増やす
※他にも、粗利を減らすが、総労働時間をそれ以上に減らす方法がありますが、IT導入の効果として粗利を減らすことは不適切ですので方針には選べません。また、総労働時間を減らし粗利を増やす方法も考えられますが、困難なので方針とするには不向きです。
3つ方法の内どれを選択するかは、経営状況を把握し課題分析し、対策を練り実現可能な施策を導き出すことができれば決まってきます。
IT導入補助金の申請において、一番重要な作業であり、事業者の経営者にとっては一番苦労する作業になるでしょう。
自社だけで作成するのではなく支援機関の協力を得て作成することを推奨します。
ITツールやIT導入支援者を先に決めてから事業計画を策定するやり方も良いのですが、決めたITツールを前提に事業計画を策定すると、手段から目標を作り出し辻褄合わせなだけでお飾りの計画になったり、ITツールに過剰な期待が込められた実現困難な計画ができてしまうことがあるため、注意が必要です。
4.地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認の取得
地域未来投資促進法(METI/経済産業省)とは
・地域未来投資促進法は、地域の特性を活用した事業の生み出す経済的効果に着目し、これを最大化しようとする地方公共団体の取組を支援するもの。
・基本方針に基づき、市町村及び都道府県は基本計画を策定し、国が同意。同意された基本計画に基づき事業者が策定する地域経済牽引事業計画を、都道府県知事が承認。
・地域経済牽引事業の支援を行う「地域経済牽引支援機関」による連携支援計画を国が承認。
つまりは、地市町村及び都道府県は基本計画に基づいて地域の特性を活用した事業を行っている事業者でなければ承認を取得することができません。もし、そのような事業を行っているのであれば承認を取得すべきです。
地域未来投資促進法の地域経済牽引事業計画の承認を取得していると加点となり採択されやすくなります。ただし、通常多くの中小企業においては、地域経済牽引事業計画を策定するのは困難であるので、取得していなくても大きな不利にはならないと思います。
5.地域未来牽引企業の選定されかつ目標を経済産業省に提出
地域未来牽引企業 (METI/経済産業省)とは
経済産業省により選定された、地域経済の中心的な担い手となりうる事業者です。
交付申請時点で地域未来牽引企業に選定されており、地域未来牽引企業として目標を経済産業省に提出していると加点となり採択されやすくなります。ただし、地域未来牽引企業には地方公共団体などからの推薦により選定されます。通常多くの中小企業においては、IT導入補助金の申請のために準備できるものではありませんので、取得していなくても大きな不利にはならないと思います。
6.gBizIDプライムアカウントの取得
IT導入補助金を申請するにはgBizIDプライムアカウントが必要です。申請から発行まで2週間とありますので早めに申請しましょう。
※公募締め切り間近は時間がかかるようです。余裕を持って申請しましょう。
gBizID申請ページ:https://gbiz-id.go.jp/top/
取得するために必要な情報
・法人の場合、法務局が発行した印鑑証明書の原本。個人事業主の場合、地方公共団体が発行した印鑑登録証明書の原本(いずれも発行日より3ヶ月以内のものに限る)
・法人代表者印又は個人事業主の実印を押印した申請書
・「法人代表者ご自身」又は「個人事業主ご自身」のメールアドレス
・「法人代表者ご自身」又は「個人事業主ご自身」のSMS受信が可能な電話番号
Step2以降 ITツール・IT導入支援者の決定など
事業計画の策定において、経営課題解決のために、どの業務プロセスをどのように改善するか検討していると思います。その改善が行えるITツールを事務所局に登録されている中から調べ、そのITツールを扱っているIT導入支援者を選定します。
後は、IT導入支援者と共に申請を進めることになります。また、事業計画の施策や導入効果の見直しを行い精度を高めていきましょう。
中小企業にとって、IT導入コストは大きな課題です。IT導入補助金はとても有益な制度ですのでぜひ活用してください。
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