知っておかないと痛い目を見る補助金の返還条件

補助金の返還条件

知っておかないと痛い目を見る補助金の返還条件

はじめに

新規設備の購入や工場等の建物の改装を行うには、少なくない資金が必要です。その資金を大抵の場合は、自己で負担、もしくは、金融機関からの借入で賄うと思います。その他にも一定の条件を満たすことができれば補助金を活用する場合もあると思います。

補助金は、金融機関等からの借入金と違い、支給された資金を基本的には返還する必要はありません。
しかしながら、特定の条件に当てはまると、全て、もしくは、一部を返還しなけばなりません。

もちろん、申請内容や補助金の使い方に不正があったりすると返還を求められますが、不正をしていなくても、補助金を返還しなけばならいケースがあります。

補助金を申請する際に、そのことを知らない事業者がかなりいらっしゃいます。知らずに返還条件に当てはまってしまうと痛い目を見ますので、申請する前にぜひ確かめてください。

本コラムをご覧頂く前に、2点ご注意して頂くことがあります。

1点目:本コラムでの説明では、下記の経済産業省の補助金を対象としています。

  • 小規模事業者持続化補助金
  • ものづくり補助金
  • 事業再構築補助金

2点目:本コラムで取り上げた以外にも、各補助金には返還条件が定められています。
条件の詳細については、各補助金の「公募要領」並びに「補助事業の手引き」をご確認ください。

取得財産を処分する場合

補助金で取得した財産のうち、単価50万円(税抜き)以上の機械等の財産又は効用の増加した財産を処分制限期間内に処分する際には、事前に事務局の承認を受けなければなりません。

もし、承認を得ずに処分を行うと、交付取消=補助金全額返還の対象なります。

また財産を処分する場合には、残存簿価相当額又は時価(譲渡額)により、当該処分財産に係る補助金額を限度に納付(返還)しなければなりません。

例えば、補助金で購入した機械を使わなくなったからといって、売ったり、捨てたりすると一定金額を返還しないといけません。

本条件を知らずに、「使わなかったら売ればいいや」と補助金を使って多めに設備等を購入すると痛い目を見ますので、ご注意ください。

財産処分とは、下記の事を指しています。
・補助金の交付の目的に反する使用
・譲渡
・交換
・貸付け
・担保に供する処分
・廃棄等

処分制限期間は、補助金毎に規程が多少異なっています。
詳細は、各補助金における「補助事業の手引き」に記載されています。

事業再構築補助金での記載内容は、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を準用します。なお、中小機構が別に定める場合には、その期間とします。」です。

ものづくり補助金での記載内容は、「補助金交付の目的及び減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)及び経済産業大臣が定める期間を指します。」です。

小規模事業者持続化補助金の補助事業の手引きには、明記されていないようです。

大抵が、減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を基にしていますので、購入する財産により処分制限期間が決まります。

ご参考:減価償却資産の耐用年数等に関する省令 | e-Gov法令検索

また、中小機構や経済産業大臣が定めている期間もありますので、財産を処分する場合には各補助金の事務局に問い合わせるのが無難だと思います。

収益納付に該当する場合

補助金の検討時に、知っていない事業者が多いのですが、補助金で購入した設備等を使って得られた収益の一部を補助金額を限度に納付(補助金を返還)しなければなりません。

表現を変えると、補助金で購入した設備を使って稼げば稼ぐほど、補助金を返還しないといけないという制度です。個人的には理不尽さを感じます。

ただし、収益が設備等を購入した際の自己負担額に達するまでは納付する必要はありません。

収益納付のイメージ

また、収益納付の計算は事業者自ら行う必要があります。しかも、計算するためには、補助金で購入した設備等でどれだけ収益があったかを記録しておく必要があります。計算できない場合(=指定された資料を提出できない場合)は、交付取消=補助金の返還になる可能性があります。

収益納付があることを知らずに、準備をしないでいると痛い目を見ますので、ご注意ください。

詳細は、各補助金における「補助事業の手引き」に記載されています。
各補助金で収益納付の計算方法はほぼ同じですが、対象期間が異なっています。

事業再構築補助金とものづくり補助金は、補助事業開始から補助事業終了以降5年間の収益が対象となります。毎年、事業化状況の報告にて収益納付を要求されます。

小規模事業者持続化補助金は、補助事業開始から補助事業終了の間の収益が対象となります。実績報告時のみ収益納付を要求されます。

賃上げ要件を達成できなかった場合

補助金によっては、賃上げ要件が設定されているものがあります。その賃上げ要件を達成できなかった場合は、補助金の一部を返還をしなければなりません。

賃上げ要件は各補助金によって異なっています。

事業再構築補助金の場合は、「大規模賃金引上促進枠」で申請した場合に要件となります。事業計画期間終了時点において、事業場内最低賃金を年額45円以上の水準で引き上げることが出来なかった場合に、通常枠で申請した場合との補助金の差額を返還する必要があります。

ものづくり補助金の場合は、賃上げは基本要件です。事業計画期間において、事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準で引き上げることができなった場合には、補助金額を事業計画年数で除した額の返還を求められます。

また、ものづくり補助金の基本要件には給与支給総額の増加要件もあり、事業計画終了時点において、給与支給総額の年率平均1.5%以上増加目標が達成できていない場合は、導入した設備等の簿価又は時価のいずれか低い方の額のうち補助金額に対応する分(残存簿価等×補助金額/実際の購入金額)の返還を求められます。

小規模事業者持続化補助金の場合は、「賃金引上げ枠」で申請した場合に要件となります。補助事業の終了時点において、事業場内最低賃金が申請時の地域別最低賃金より+30円以上、又は、すでに事業場内最低賃金が地域別最低賃金より+30円以上を達成している場合は、現在支給している事業場内最低賃金より+30円以上引き上げることができなった場合には、補助金が交付されません。
※補助金の返還では無く、そもそも貰うことができません。

賃上げを計画すると、補助金の上限が増える、補助率が高くなる、審査で有利になる等のメリットも多いですが、達成できないと補助金が貰えない、返還しないといけない等の厳しいペナルティがあります。賃上げは事業者によって最も負担が増える行為なので、しっかりと計画を立てることが重要です。

賃上げ未達時の補助金返還義務を知らないで、採択されやすくなるからと軽い気持ちで計画すると痛い目を見ますので、ご注意ください。

実地検査にて返還要求された場合

補助金を活用した場合、どの事業者にも会計検査院による実地検査が行われる可能性があります。

不正、不当な行為が確認された場合には、補助金の返還を要求されます。

「ほんとに実施検査なんてやってるの?」「自分のところが対象になることは無いんじゃない。」と、軽く考えて、正当性を証明する資料等を保管していないと痛い目を見ますので、ご注意ください。

私がサポートした事業者で、ものづくり補助金を採択された事業者が実際に実地検査を受けています。本コラムを読んでくださった方に信憑性を伝えることはできませんが、補助金の公募要領に書かれているだけのブラフではないことは確かです。

弊社の補助金申請サポートについて

弊社は、中小企業向けの補助金申請サポートを行っています。

主に事業計画策定を行い、申請や実績報告をお手伝い致します。

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